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炎症性腸疾患について
腸で起こる炎症の総称を、炎症性腸疾患といいます。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除するために炎症が起こります。炎症は腫れや痛み、発熱として現れます。
炎症性腸疾患には、原因がはっきりしている特異的なもの(特異的炎症性腸疾患)と、原因がはっきりしない非特異的なもの(非特異的炎症性腸疾患)があります。
炎症性腸疾患の原因
炎症性腸疾患のうち、特異性腸炎は、ウイルスや細菌の感染症、抗生物質などの薬剤による急性出血性大腸炎、膠原病などの全身性疾患、放射線照射、血液循環の悪化などによって引き起こされます。
一方、非特異性腸炎は、原因がはっきりしない炎症性腸疾患です。潰瘍性大腸炎、クローン病、単純性潰瘍、ベーチェット病などが非特異性腸炎です。近年増加傾向にある潰瘍性大腸炎とクローン病については、以下に詳述します。
潰瘍性大腸炎と
クローン病の違い
「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の主な違いは病変が生じる場所です。
「潰瘍性大腸炎」は大腸の粘膜に病変が生じますが、「クローン病」は口から肛門までの消化管全体に病変が生じます。
両疾患には類似した特徴があり、以下の5点が共通しています。
- 炎症性腸疾患に分類される
- 若年者に多く発症する傾向がある
- 消化管の慢性的な炎症
- 活動期(症状が出ている期間)と寛解期(症状が鎮まる期間)を繰り返す
- 原因がはっきりわかっておらず、厚生労働省から難病に指定されている
このように、両疾患には多くの共通点がありますが、治療法が異なる部分もあるため、正確に区別する必要があります。
潰瘍性大腸炎とは
大腸の粘膜に炎症が起こった結果、組織の損傷や、潰瘍ができる疾患です。原因不明で根治的な治療法はありません。そのため、厚生労働省の定める難病に指定されています。しかし、専門医を受診し、適切な治療を受けることで、症状を制御することができます。それにより、健康な方と同じような生活を送ることが可能です。
クローン病と潰瘍性大腸炎との大きな違いは、潰瘍性大腸炎は大腸だけに炎症が起こることで、クローン病は消化管のどこにでも炎症が起こるという点です。
免疫と潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎の炎症は、異物を体外に排出しようとする免疫系の防御システムが過剰に働くことによって起こると考えられています。はっきりとした原因はまだわかっていませんが、体内でTNF-αという物質が過剰に産出され、潰瘍性大腸炎の炎症を引き起こすことがわかっています。
潰瘍性大腸炎の症状
初期に起こるのは下痢や血便、さらに、おなかの痛みが生じることもあります。重症例では、これらの症状に貧血、発熱、体重減少を伴うこともあります。
この疾患は症状が落ち着く寛解期と症状が悪化する再燃期が交互に来るため、治療はまず症状の制御に重点を置き、次に寛解状態をできるだけ長く維持することに重点を置きます。また、加齢とともに大腸がんの発症する危険性が高まるため、定期的に大腸カメラ検査を受けることも大切です。
潰瘍性大腸炎の合併症
炎症が重症化して腸管壁の奥深くまで進行すると、腸管合併症や全身症状を伴う合併症が起こることがあります。その結果、腸管の狭窄や閉塞、穿孔、巨大結腸症、大量出血を引き起こすことに繋がります。巨大結腸症は腸がガスで膨張する中毒症状です。これらの合併症の症状が起これば、緊急手術が必要です。
腸の他に起こる合併症の症状には、関節、皮膚、目の病変があります。肝胆道系障害、結節性紅斑、口内炎が起こる場合もあります。
潰瘍性大腸炎の
検査・診断
検査・診断症状の内容や出始めた時期などをお聞きした上で、大腸カメラ検査とレントゲン撮影を行います。大腸カメラ検査では、潰瘍性大腸炎に特徴的な損傷や潰瘍を確認でき、組織を採取することもできます。当院の大腸カメラ検査は鎮静剤を使用して痛みの少ない検査となっていますので、安心してご相談ください。
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎の治療法は、症状があるときには炎症を抑え、できるだけ長く寛解状態を保つという薬物療法を基にしています。
腸の炎症には5-ASA製剤が有効です。炎症が強い場合はステロイドの使用も考慮されます。その他の治療法としては、免疫系を制御する免疫調節薬、抗TNF-α抗体である生物学的製剤、抗菌薬などがあります。
日常生活での注意点
寛解期に入れば、健康な方と同じような生活を送ることが可能です。仕事や学校生活に制限はありませんが、日常生活で以下のことに気をつけることで寛解期を延長することができます。
過度の運動は避けましょう。しかし、疲れない程度の適度な運動は効果的と考えられます。
寛解期には食事制限はありませんが、暴飲暴食は避けてください。おいしいものをおいしく食べて、バランスのとれた食生活を心がけましょう。
飲酒の影響はまだよくわかっていません。ただ、寛解期の適度な飲酒は特に問題ありません。
潰瘍性大腸炎と
妊娠・出産
潰瘍性大腸炎の女性が症状を制御しながら、寛解期に妊娠・出産する例は珍しくありません。再発を避けるためには治療を継続することがとても重要です。
潰瘍性大腸炎の薬物療法は妊娠中も続ける必要がありますが、胎児への影響を考慮し、再発を避けるためにうまく制御する必要があります。妊娠が判明した時点で自己判断により服薬を中止することは非常に危険です。再発して強い炎症を引き起こし、より強い薬剤の使用が必要になる可能性があるためです。可能であれば、妊娠を考え始めたらすぐに医師に相談し、事前に十分な知識を得るようにしましょう。
クローン病とは
クローン病は、小腸や大腸などの消化管に炎症が起こり、組織の損傷や潰瘍ができる慢性疾患です。原因不明のため根治的な治療法はなく、厚生労働省の難病に指定されています。しかし、専門医を受診し、適切な治療を受けて症状を抑えることで、健康な方と同じような生活を送ることが可能です。
炎症は間隔をあけてできやすく、病変ができる場所によって小腸型、小腸・大腸型、大腸型に分類されます。症状や治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
免疫とクローン病
クローン病の炎症は、体内に侵入した異物を排出しようとする免疫系の防御システムが過剰に働くことによって起こると考えられています。正確な原因はまだわかっていません。しかし、潰瘍性大腸炎と同様にTNF-αという物質が体内で過剰に産生され、それがクローン病の炎症を引き起こすとされています。
クローン病の症状
症状は多岐にわたり、患者様によってかなり異なった症状が現れます。初期には腹痛と下痢が一般的な症状として現れます。
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腹痛
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下痢
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発熱
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体重減少
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切れ痔
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肛門の潰瘍や膿
この疾患は、症状が落ち着く寛解期と悪化する再燃期が交互に繰り返されるため、治療はまず症状を制御し、寛解期をできるだけ長く保つことに重点を置きます。
また、様々な合併症が起こることもあります。
クローン病の合併症
クローン病の炎症は、粘膜の浅い部分から始まります。疾患が進行するにつれて深い部分へと広がり、腸管合併症を引き起こす場合があります。合併症の症状としては、腸管が狭くなる、腸管に穴があく、膿がたまって膿腫ができる、瘻孔(腸、腸と皮膚、腸と内臓を繋ぐ管)に穴があく、などがあります。さらに、大量出血、大腸がん、肛門がんなどもまれに起こります。
腸管以外に症状を示す合併症の病変は関節に多い傾向があります。眼や皮膚に現れることもあります。肝胆道系障害、結節性紅斑、口内炎も起こることがあり、腸管以外の合併症は潰瘍性大腸炎と似た症状です。
クローン病の
検査・診断
症状の性質と症状が出始めた時期をお聞きした上で、大腸カメラ検査とレントゲン検査を行います。大腸カメラ検査では、クローン病に特徴的な病変を直接確認することができ、組織を採取することも可能です。当院では痛みの少ない大腸カメラ検査を行っておりますので、安心してご来院ください。
クローン病の治療
クローン病には、薬物療法や栄養療法などの内科的治療が基本となります。重篤な合併症がある場合や内科的治療で効果が不十分な場合は、外科的治療も考慮されます。
薬物療法
症状のある時期には、炎症を抑えて寛解をもたらし、寛解期にはそれをできるだけ長く維持するための治療が行われます。炎症治療薬には5-ASA製剤やステロイドがあり、程度によってステロイドの種類を変えます。免疫調節薬、抗TNF-α抗体である生物学的製剤、抗菌薬も使用されることがあります。
栄養療法
クローン病の症状がある場合、食事による刺激が大きく、炎症に悪影響を及ぼすことがあります。また、炎症が栄養状態を悪化させるケースもあります。このような場合、栄養剤を投与する栄養療法が必要になることがあります。
日常生活での注意点
寛解期は、仕事や学校生活などに制限はありません。潰瘍性大腸炎と異なるのは、食事への注意です。寛解期には自分に合わない食品を避ければ良いです。スマートフォンなどで食事を撮影しておくと、合う食品と合わない食品を見分けるのに役立ちます。
飲酒の影響はまだよく分かっていませんが、寛解期の適度な飲酒は特に問題ありません。
喫煙はクローン病の再燃や炎症の悪化に関与することが知られているので避けるべきです。
適度な運動も効果的です。これらの注意点を守り、寛解期を長く保てるようにしましょう。
クローン病と
妊娠・出産
クローン病の女性が、再発を防ぐために治療を続けながら、寛解期に妊娠・出産することは珍しくありません。
クローン病の薬物治療は妊娠中も継続されますが、胎児への影響を考慮しながら、再発を防ぐためにうまく制御することが必要です。妊娠がわかったからといって自己判断で服薬をやめてしまうと、病気が再発して強い炎症を起こし、より強い薬を使わなければならなくなる可能性があります。可能であれば、妊娠を考え始めた時点で医師に相談し、事前に十分な知識を得ておくことをお勧めします。