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膵嚢胞とは?
膵臓に水風船のような液体の入った袋ができる病気です。
最近は人間ドックや健康診断の普及ならびに画像診断の進歩によって、無症状の膵のう胞が偶然発見される機会も多くなっており決してめずらしい病気ではありません。
年齢とともに増えていく病気です。
膵嚢胞には種類が2つあります。
- 真性嚢胞・・・液体の周囲が上皮細胞で覆われています。腫瘍性と非腫瘍性に分けられます。腫瘍性には、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)粘液性嚢胞腫瘍(MCN)漿液性腫瘍(SN)があります。
- 仮性嚢胞・・・急性膵炎や外傷などによって膵液が膵臓の周囲に漏れて溜まってしまいできる膵嚢胞です。仮性嚢胞の方が多いです。
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは?
偶然発見される膵のう胞の中で最も多いとされています。
ほとんどの方に自覚症状は見られませんが、腫瘍によって産生される粘液によって膵液がうっ滞し、腹痛や背部痛といった膵炎症状がみられることがまれにあります。
高齢の男性にやや多く、膵臓の中に多発することもしばしばあります。
多くは良性であるため、経過観察となることが多いのう胞の一つです。
ただ経過中に一部のIPMNは年3%の確率で悪性化することが報告されています。また最近になり年平均4.4%の確率でのう胞とは別に膵臓がんが発生することが分かってきました。
一般人口では膵臓がんの頻度が0.01%程度であることを考えると非常にリスクが高いといえます。そういった意味からもIPMNが認められた場合は、慎重な経過観察が重要になります。
粘液性のう胞腫瘍(MCN)とは?
若中年女性の膵体尾部(膵臓の左側)に好発する類円形ののう胞性腫瘍で、無症状で大きくなってから発見されることが多いです。
悪性腫瘍とされているため、MCNと診断がつけば原則手術適応とされています。ただ最近の報告では、悪性化率は低いことが判明しています。
漿液性のう胞腫瘍(SCN)
SCNも比較的よく見られるのう胞で、女性に多く、60歳前後が好発年齢とされています。
ただ、SCNの悪性化はほとんどなく、MCNと異なり経過観察が原則とされています。
まれに腫瘍が大きくなり周辺の臓器を圧迫するなど、二次的な症状が出た場合は手術が選択されます。
症状は?
特有の症状はありません。
仮性嚢胞の場合は、急性膵炎に伴うものがあれば、腹痛や発熱などが認められます。
真性嚢胞は無症状であることがほとんどです。
検査は?
超音波検査やMRIやCTを行います。
膵炎からの仮性嚢胞などや膵臓癌に進行している可能性がある場合に採血をする場合があります。血清・尿中アミラーゼが高値です。
治療は?
真性嚢胞
非腫瘍性は治療の必要はないです。腫瘍性は種類によって対応が必要になりますが手術が必要になる場合もあります。
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は最も多いですが、癌化のリスクが少なからずあります。定期的に超音波検査やCTやMRIを半年毎に観察します。自然治癒は原則ないので経過観察は続きます。
- 粘液性嚢胞腫瘍‘(MCN)癌のリスクが高いため、原則手術になります。
- 漿液性腫瘍(SCN)無症状の場合は経過観察です。腹痛、出血がある場合や拡大傾向がある場合、胆管や消化管などの周囲に影響が出る場合に手術を行います。
仮性嚢胞
原因となる疾患(急性膵炎や外傷など)がある場合は、まずそちらを治療します。嚢胞が小さくて症状もない場合は、経過観察します。自然消滅することがあり、基本的に保存治療を行います。しかし、膵嚢胞が大きい場合や、症状や出血などがある場合は、処置(内視鏡的・経皮的)や手術(ドレナージ)をします。
こうした手術を考慮しなければいけないのう胞と、経過観察としてよいのう胞を適切に振り分けることが重要となってきます。膵のう胞の状態や患者さまのお身体の状態に合わせて、各種検査を組み合わせながら診断を進めていきます。